こんにちは。
WindowsのパソコンやMicrosoft Officeは、パソコンの使っている方の多くが日常的に使っているソフトの1つではないでしょうか。
Macユーザーの方でもオフィススイートはMicrosoft Officeを使って作業されている方も多いと思います。
Microsoft Officeは昔から使われてきたソフトなので人々の生活にも馴染んでおり、WordやPowerPointを使うと公文書から発表用の資料まで器用に作り上げることができます。特に個人的にはPowerPointが非常に便利なので、ブログに掲載する画像の大半はPowerPointを用いて編集を行っています。
PowerPointが便利な一方、ブログやWebページに画像やロゴなどを作製して掲載し収益を得たり、画像やロゴを販売物や配布物に使用する際には、フォントやアイコンの著作権(利用規約)に留意しなければなりません。
権利関係は奥が深すぎて僕のような素人が細かいところまで突っ込んでいくと難しいのですが、今回は
についてまとめてみようと思います。
Contents
Windows(Office)のフォントの商用利用に対する取り扱いを調べる
フォントの商用利用に関しては、
- ソフト(Officeなど)が商用利用に対応しているか
- フォント自体(フォントの製作元、著作権、規約)が商用利用に対応しているか
の2つをチェックする必要があります。
まずは、使用するソフト側である、Windows(Office)の規約を確認してみましょう。
Windowsに標準搭載されたフォントの利用規約
Microsoftの著作物(Officeなどのアプリケーションから、アイコン、ロゴ、テンプレート等まで全て含む)を利用する上では、各ソフトのライセンス条項および著作物の使用についての規定を守って使用する必要があります。
今回はWindows標準フォントを、Officeアプリを用いて商用利用する場合の可否についてなので、
- Windows OSのライセンス条項(例:Windows 10)
- Office のライセンス条項(例:Office 365 Solo)
- マイクロソフトの著作物の利用に関する規定
の3つを考慮しなくてはいけません。各規定におけるフォントの取り扱いについて参照してみましょう。
Windows 10のライセンス条項
ここでは例としてWindows 10のライセンスを取り上げます。Windows 10のライセンス条項内の、フォントに関する記載内容、加えて商用利用に関する記載は以下のようになっています。
適用対象。本ライセンス条項は、お客様のデバイスにプレインストールされている、または小売業者から取得してお客様がインストールした本 Windows ソフトウェア、お客様が本ソフトウェアを受領したときのメディア (存在する場合)、本ソフトウェアに含まれるフォント、アイコン、画像、または音声ファイル、および本ソフトウェアに対するマイクロソフトの更新プログラム、アップグレード、追加ソフトウェア、またはサービスに適用されます。ただし、これらにその他の条項が付属している場合は、その限りではありません。マイクロソフトが開発し、Windows に含まれてその一部となっている機能 (メール、連絡先、ミュージック、フォトなど) を提供する Windows アプリケーションにも適用されます。本ライセンス条項にお客様のデバイスで利用できない機能またはサービスに関する条項が含まれている場合、当該条項は適用されません。
(中略)
(v) Word、Excel、PowerPoint、および OneNote が Windows に同梱されている場合、これらのアプリケーションは、お客様による個人的かつ非商業的使用のためにライセンスされます。ただし、お客様が別途の契約に基づく商用使用権を有している場合はその限りではありません。
(引用元 Windows 10 ライセンス条項)
この内容を読む限り、
- フォントに関しては、フォントそのものにライセンス条項が付属していない場合は、使用するアプリケーションのライセンス条項を適用する
- Officeを使用する場合は、Officeに商用利用権が付属されていれば、フォントの条項を考慮した上で商用利用することができる
ということになります。
Windowsの条項を読む限りでは、使用する「アプリケーションの条項」(今回でいうとOffice 65 Solo)と、「フォントの利用規約」について確認をした上で、問題なければ商用利用することができます。
Office 365 Soloのライセンス条項
次に、使用するソフトのライセンス条項を確認します。今回の例ではOffice 365 Soloのライセンス条項です。
文中には、
一度に 1 人のユーザーのみが、ライセンスを取得した各デバイス上で本ソフトウェアを使用することができます。本サービスおよび本ソフトウェアは、商用、非営利、または収益が発生する活動では使用できません。
と記載されています。
これを見る限り、Office 365 Soloのライセンスだけでは商用利用ができないという解釈になるのですが、
Microsoftの公式ホームページの中には、Office 365 Soloに商用利用権があると解釈できるページも複数散見されます。
Officeの商用利用権については、ライセンス条項を個人で議論しようとしても曖昧な部分が多く、Microsoftの窓口から弁護士さんまで巻き込んで議論するハメになりました。(笑)
その内容については以下の記事でまとめていますので、こちらでは割愛します。
でまとめていますので詳細は当記事では述べませんが、この記事の内容を一言でまとめると
という結論を導くことができたため、あとはフォントの規約を確認すればよいことになります。
マイクロソフトの著作物に関する規定
また、“マイクロソフトの著作物の使用について”というページ内に、フォントについての取り扱いが詳しく述べられています。
Windows には、多数のインストール済みフォントが付属しています。Microsoft Office およびその他のマイクロソフト アプリケーションでは、追加のフォントがインストールされます。Microsoft Office と Windows の両方の使用許諾契約書 (EULA) にはフォントに関する条項があり、それらの製品に含まれているフォントの取り扱いを規定しています。通常、マイクロソフト製品に付属するフォントは、変更、コピー、または再配布することはできません。マイクロソフト製品に付属しているフォントは、多くの場合、作成元から直接入手することもできます。追加のエンド ユーザー ライセンス、ISV ライセンス、または OEM ライセンスが必要な場合の連絡窓口を確認するには、各フォント ファイル内の商標表示と著作権表示を参照してください。著作権表示または商標表示にマイクロソフトが作成元であることが記載されている場合は、フォントのライセンスを Monotype Imaging から取得できることがあります。マイクロソフトのフォントに関するライセンス情報は、「Typography (タイポグラフィ)
」を参照してください。
(引用元 マイクロソフトの著作物の使用について)
この内容を要約すると
- フォントの扱いはWindowsやOffice(その他のアプリケーション)の規約に従う
- マイクロソフトがライセンスを規定しているフォントはTypographyからライセンスを確認できる
- その他のフォントについては著作元を調べてライセンスを確認する必要がある
ということになります。
つまり、
ということです。
フォントメーカー(フォント制作元)の使用許諾範囲を確認する
WindowsやOfficeに関しては、ソフトやライセンスによって商用の可否が異なり、「商用利用ができない」と明示されていないソフトの場合は、Windowsの規約の上ではサービス全般の商用利用を禁じている文面がないため、基本的には(常軌を逸脱しない範囲で)自由に商用利用してもよい、という解釈になりました。(少なくとも僕にはそう読み取れました。)
加えて、Officeの商用利用については、Microsoft上の規約だけでは判断が難しく、弁護士への相談にまで発展し、Office 365 Soloについては商用利用可能であることがわかりました。
では次に、
について、各フォントの利用許諾契約を確認しながらまとめていこうと思います。
Windowsフォントの保存場所
Windowsに標準搭載されたフォントは、フォントファイルとして保存されています。このファイルを参照することで著作権を保持している企業を調べることができます。
フォントファイルの保存場所は、
「エクスプローラ」→「C:(メインドライブ)」→「Windows」→「Fonts」です。
日本語のみならず英語や記号等のフォントも表示されます。
フォントの著作権の確認
フォントの著作権を調べるには、
「右クリック」→「プロパティ」→「詳細」タブで調べることができます。
例えば、以下の画像のように、HGPゴシックEの著作権元を調べると、「株式会社リコー」が著作権を持つフォントであることがわかります。
Windows標準搭載日本語フォントの著作権元
Windowsに含まれる代表的な日本語フォントの著作権元を以下に示します。
フォントの頭文字がフォントの種別となっているため、同一の頭文字を持つフォントの著作権元はおそらく同じです。
- リコーフォント(頭文字列HGP,HGS,HG,MS)
- 字游工房フォント(游ゴシック、游明朝、各種ヒラギノフォント)
- メイリオ(Meiryo)
- モリサワ(Typebank)フォント(UDデジタル教科書体各種)
各フォントメーカーの利用許諾契約はどうなっているか?
上に列記した、Windowsに搭載された日本語フォントは、利用許諾契約の中に商用利用が含まれているのか、個別に確認していきます。
リコーフォントの規約
頭文字列HGP,HGS,HG,MSで示されているフォントが株式会社リコーが著作権を持つフォントになります。
特に、MSで始まるフォントも、マイクロソフトが著作権を持つわけではなく、リコーがマイクロソフトに提供しているフォントという意味のようです。
リコーフォントについては、リコーのホームページに使用許諾範囲が明記されており非常に明快です。
<ソフトウェアへのバンドル>
Microsoft® Officeなどのオフィススイートやはがきソフト等に搭載されたフォント基本使用 (引用元 リコーフォントの使用許諾範囲について)
ここでいう基本使用に商用利用権は含まれていない為、
ということになります。
字游工房フォントの規約
游ゴシック、游明朝(Macの場合はヒラギノフォントも含む)は字游工房が著作権を保持しています。
字游工房のライセンス上は以下のような表現をされています。
搭載フォントのライセンスは、それぞれのOSメーカーからOSとともに使用許諾がされております。詳しくは下記をご参照ください。ご不明な点は各OSメーカーのサポートにお問合せくださいますよう、お願い致します。
Microsoft(Windows 10):OSの下記に使用許諾が搭載されています。
C:Windows>System32>license.rtfご不明な点はMicrosoft Typography team(mstwsite@microsoft.com)にお問い合わせください。
また、技術的サポートはMicrosoft Typographyのページをご確認ください。(引用元 OS搭載の游書体について)
つまり、字游工房側で商用利用の可否を規定しているわけでは無く、Microsoft側のフォントの利用規定に従ってください、ということを言っています。
一方、Microsoftがライセンスを規定しているフォント一覧は、先ほど示したTypography (タイポグラフィ)にライセンスが掲載されているはずですが、どうやらこれは1からフォントを購入する場合のライセンスのようにも見えます。また、游ゴシックなど字游工房のフォントはフォントリストから見つけ出すことはできませんでした。
Microsoftは確実な回答をくれないため、Web上で一番合点がいく(都合の良い解釈ができる)サイトを基に考えてみましょう。以下の例を参考にします。
このサイトではリコーに対しての問い合わせを行っていますが、Microsoft側の意向に従ってライセンスを規定するフォントに関しては、WindowsやOfficeのライセンス条項に記載がある“フォントコンポーネント”の文章に従って使用用途の可否の判断を行えばいい、という考えのようです。
当サイトでもこの考えに従って、字游工房のフォントが商用利用可能かどうかを検証してみます。
まず、Windows 10のライセンス条項には、フォントコンポーネントの項や表示、印刷物に関する規定を明示している文章は見受けられませんでした。
一方、Office 365 Soloのライセンス条項には
- フォントコンポーネント。本ソフトウェアの実行中、お客様は本ソフトウェアに付属のフォントを使用してコンテンツを表示および印刷することができます。お客様は、コンテンツを印刷するためにフォントをプリンターまたはその他の出力デバイスに一時的にダウンロードしたり、フォントの埋め込みに関する制限の下で許容される範囲でコンテンツにフォントを埋め込んだりすることができます。
とあります。この文面を見る限りは
- フォントメーカー自体がMicrosoftにその使用許諾範囲を任せている
- Microsoft側はOffice 365 Soloの使用時にフォントの埋め込みや印刷を許可している
と読み取ることができます。また、Office 365 Soloには商用利用権が付属していますので、
と言えます。
メイリオ(Meiryo)の場合
メイリオはMicrosoftが著作権を持っていますので、字游工房の場合と同じように、Officeなど使用するMicrosoftアプリケーションのライセンス条項が適用されると考えられます。
そのため、メイリオも同様に、商用利用が認められたMicrosoftアプリケーションを用いる場合は、商用目的の画像や印刷物の中にフォントを埋め込んで印刷、Web掲載などを行っても良いと言えます。
モリサワ(Typebank)フォントの場合
UD教科書体は、Windows 10の大型アップデート Fall Creators Updateによって新たに搭載されたフォントになります。
モリサワフォントの使用許諾はこちらで確認が出来ますが、該当ページにはWindows OSのアップデートで搭載されたフォントについての使用許諾は確認できませんでした。
ということで、モリサワフォントの問い合わせ窓口にズバリ質問してみたのですが、回答としてはMicrosoftのソフトライセンス条項に従ってください、とのこと。つまり、字游工房のフォントやメイリオと同様の扱いになります。
つまり、このモリサワフォントのUD教科書体も、商用利用が認められたMicrosoftアプリケーションを用いる場合は、商用目的の画像や印刷物の中にフォントを埋め込んで印刷、Web掲載などを行っても良いということになります。
商用利用可能(と考えられる)フォントとその条件のまとめ【結論】
ほんとに規約やライセンスを読み込みこの結論に達するまでにダラダラと行ったり来たりしてかなりの時間を食いました。(笑)
この文章を全部読まなくても、とりあえずは僕が規約やライセンスから導いた、Windows(Office)標準フォントの商用利用可否とその利用条件がわかるように簡単にまとめておきます。
【商用利用できる条件】
という結論になります。
ライセンスはときどき更新が入るので常にこの形態でしようできるかはわかりませんが、少なくとも2018年3月現在の規約文を僕が見る限りは、上記の結論に導かれました。
弁護士の方の見解
一応自分なりにフォントの商用利用についても結論を出した後ではあるのですが、
Office 365 Solo の商用利用について札幌弁護士会の方の無料相談を受けた際に、フォントの商用利用についてもご意見を貰ってきましたので、その内容についても簡単にまとめておきます。(相談の本題はOfficeの商用利用についてでしたので、詳細は以下の記事からどうぞ)
フォントに関しては、弁護士の方も僕が出した解釈で問題ないというご意見でした。
Microsoft Office と Windows の両方の使用許諾契約書 (EULA) にはフォントに関する条項があり、それらの製品に含まれているフォントの取り扱いを規定しています。
(引用元 マイクロソフトの著作物の使用について)
という記載によって、標準搭載フォントの中でライセンスをMicrosoft側の判断に任せているフォントについては、WindowsやOfficeの規約上認められた使用許諾範囲で使用すればよいということです。
つまり、商用利用可能なOffice(Office 365 Soloなど)では、ライセンスがMicrosoft判断となっている字游工房、メイリオ、モリサワといったフォントの商用利用も可能になるということです。
やはり弁護士の方がそう言ってくれると心強いですね!
おわりに
Windows標準搭載フォントを商用利用できるかについて、いろいろ細かく考察してまとめてみたのですが、いろいろ考えることが多すぎて面食らいました。
もしかすると、上記記述の中にも矛盾があったり、細かいフォントメーカーのライセンスを確認する上で誤りがあったりするかもしれませんが、出来るだけお咎めの無い範囲で使える方法を考えてみたつもりです。
ということで、当ページのPowerPoint画像には引き続きUD教科書体を用いていく予定です。記述やライセンスの解釈に不足がありましたらご連絡をください。
追記
この度札幌弁護士会の無料相談を利用させて頂き、Office 365 Soloの商用利用権及びフォントの商用利用についてのご意見を頂きましたので、
"Office 365 Soloは商用利用権がある"
という内容を踏まえてリライトを行いました。
文面上不備がございましたらコメント等で申し付け頂けると幸いです。